このトピックは「Google Analytics SDK for Android」と「Android Developer’sのブログ記事」を参考にしています。
SDKの概要
Google Analytics SDK for Androidは、Google Analytics for Mobile Apps SDKの一つで、モバイルアプリの操作を追跡し、それをGoogle Analyticsへレポートするインタフェースを提供します。SDKを利用すると主に下記のものが測定可能です。
- 訪問者数
- セッションの滞在時間
- バウンスレート(直帰率:ウェブサイトを訪問し、サイト内をじっくり閲覧せずに離れた訪問者の割合のこと)
- ユニーク訪問者数
モバイルアプリケーションの追跡は、Webサイトのページの追跡モデルに対して、若干の構造的な違いがあります。SDKはウェブサイトの訪問者を追跡し、Webページのウィジェットとやりとりを行うモデルを使用しています。したがって、以下で使用される用語は従来のウェブサイトの追跡モデルを、モバイルアプリケーションの追跡として置き換えたものとなります。
このSDKがどのように機能するかを理解するため、Analyticsで追跡する方法に詳しくなるべきです。Analyticsとやりとりするアプリを作るには、以下のモバイル追跡SDKを使用してください:
ページビュー追跡
ページビューは、伝統的なWebサイトのトラフィック量を図る標準的な指標です。モバイルアプリはHTMLページを含んでいないので、ページビューのリクエストを「いつ」「どれくらい」発生させるかを決定する必要があります。また、ページビューのリクエストはディレクトリの構造に基づいたレポートとして設計されています。そのため、Analyticsのコンテンツレポート中の、ページのパス名を使用するため、明示的な要求用の名前を用意する必要があります。選択された名前は実際のHTMLのページがなくとも、ページパスとしてAnalyticsのレポート中に設定されます。
イベント追跡
Analyticsでは、イベントはページビューのリクエストから、ユーザーのウェブページの要素とのやりとりを明確に追跡するように設計されています。Google Analyticsのイベント追跡機能を利用して、Analyticsのレポートインタフェースのイベント追跡セクション中にレポートされる呼び出しを、追加で利用できます。イベントはカテゴリを利用してグループ化され、また、イベント毎のラベルも利用でき柔軟性の高いレポートを提供します。例えば、マルチメディアのアプリはビデオのカテゴリとビデオ名毎のラベルに対して、再生/停止/一時停止を行う事ができます。Google Analyticsレポートはビデオのカテゴリにタグ付けされた全てのイベントを収集します。イベント追跡の情報については、イベントトラッキングガイドを参照して下さい。
カスタム変数
カスタム変数は名前と値のペアのタグで、Google Analyticsの追跡を強化するために追跡コード中に挿入することができます。使用方法に関する情報は、カスタム変数ガイドを参照して下さい。
はじめよう
システム要件
Google Analyticsの追跡システムにAndroidアプリを統合するには、以下のものが必要です:
- Android developer SDK (Windows, Mac OS X, and Linuxで使用可能)
- Google Analytics for Mobile Apps Android SDK
- Android 1.5以上で使用可能です。
セットアップ
- libGoogleAnalytics.jar をプロジェクトの /libs ディレクトリに追加します。
- プロジェクトのAndroidManifest.xmlに以下のパーミッションを追加します:
- <uses-permission android:name="android.permission.INTERNET" />
- <uses-permission android:name="android.permission.ACCESS_NETWORK_STATE" />
SDKに含まれているサンプルのアプリケーションは、セットアップが成功したらプロジェクトがどのような構成となっているべきかを示すものとなっています。Analyticsが統合された自身のアプリのテンプレートとして、自由に利用しても構いません。
SDKを利用する
SDKを利用する前に、www.google.com/analyticsでフリーのアカウントを最初に取得し、適当な(偽の)WebサイトのURL(例:http://mymobileapp.mywebsite.com)を使ったアカウントに、Webサイトプロフィールを作成しなければなりません。プロフィールを生成したら、WebプロパティIDを書き写すかコピーを保管してください。
WebプロパティIDはまた、追跡コードである「UAナンバー」として知られており「UA-xxxxx-yy」のような形式となっています。xとyは各プロフィールのユニークな番号を示します。追跡オブジェクトをインスタンス化する際はWebプロパティIDを明示する必要があります。詳しくはWebプロパティを御覧ください。
SDKの使用の際には、ユーザに対して、アプリケーション自身や利用規約で、匿名でアプリケーション中のユーザの活動を追跡し、レポートする権利を有していることを示す必要があります。さらに、Google Analytics SDKの使用に関して、アカウントのサインアップ時にGoogle Analytics利用規約に同意する必要があります。
追跡を開始する
GoogleAnalyticsTracker.getInstance()をコールして、シングルトンのトラッカーを取得します。startメソッドをコールすると、WebプロパティIDが渡されて、アクティビティの追跡が開始されます。アクティビティのonCreateメソッド中で直接このメソッドをコールすると良いでしょう。例:
package com.google.android.apps.analytics.sample;
import com.google.android.apps.analytics.GoogleAnalyticsTracker;
import android.app.Activity;
import android.os.Bundle;
import android.view.View;
import android.view.View.OnClickListener;
import android.widget.Button;
public class TestActivity extends Activity {
GoogleAnalyticsTracker tracker;
@Override
protected void onCreate(Bundle savedInstanceState) {
super.onCreate(savedInstanceState);
tracker = GoogleAnalyticsTracker.getInstance();
// 手動のディスパッチモードで追跡を開始する...
tracker.start("UA-YOUR-ACCOUNT-HERE", this);
// あるいは、ディスパッチ間隔(秒)で指定して追跡を開始することも可能
//tracker.start("UA-YOUR-ACCOUNT-HERE", 20, this);
setContentView(R.layout.main);
Button createEventButton = (Button)findViewById(R.id.NewEventButton);
createEventButton.setOnClickListener(new OnClickListener() {
@Override
public void onClick(View v) {
tracker.trackEvent(
"Clicks", // カテゴリ
"Button", // アクション
"clicked", // ラベル
77); // 値
}
});
Button createPageButton = (Button)findViewById(R.id.NewPageButton);
createPageButton.setOnClickListener(new OnClickListener() {
@Override
public void onClick(View v) {
// "Medium"名、"MobileApp"の値、セッションレベルのスコープで、このページビューにカスタム変数を追加する
// パラメータは順に、「Index (1~5)」「名前」「値」「スコープ」
// スコープの定義:訪問者=1, セッション=2, ページ=3(デフォルト)
tracker.setCustomVar(1, "Navigation Type", "Button click", 2);
// ページビューを追跡します。これはおそらく、アプリケーションを追跡する方法として良い方法でよく使われるでしょう。
// 例えば、
// tracker.trackPageView("/help"); > ヘルプ画面を誰が見たか追跡する
// tracker.trackPageView("/level2"); > 誰がゲームのレベル2に達したかを追跡する
// tracker.trackPageView("/uploadScreen"); > 誰がアップロード画面を利用したかを追跡する
tracker.trackPageView("/testApplicationHomeScreen");
}
});
Button quitButton = (Button)findViewById(R.id.QuitButton);
quitButton.setOnClickListener(new OnClickListener() {
@Override
public void onClick(View v) {
finish();
}
});
Button dispatchButton = (Button)findViewById(R.id.DispatchButton);
dispatchButton.setOnClickListener(new OnClickListener() {
@Override
public void onClick(View v) {
// 手動でディスパッチを開始する。一定間隔でディスパッチする方法で開始した場合は不要。
tracker.dispatch();
}
});
}
@Override
protected void onDestroy() {
super.onDestroy();
// これ以上必要のない追跡を停止する
tracker.stop();
}
}
カスタム変数のスコープの定義
カスタム変数に定義できるスコープは次の3種類が存在します。
- 訪問者スコープ(=1):端末でアプリケーションが最初に動作する時のみ呼び出します。同じインデックスでカスタム変数を生成、または、最初の変数を上書きしてはいけません。どのバージョンのアプリが使用されたか、どの種類の電話か、ライトとフルバージョンのアプリとの比較、または、アプリケーションのインストールから全く変化しない何らかのデータを送信するのに便利です。
- セッションスコープ(=2):アクティビティが開始する毎に1度だけ呼び出します。同じインデックスで異なるカスタム変数を生成しない場合、アクティビティのライフサイクル中の全てのページビューやイベントに対して適用されます。
- ページスコープ(=3):trackEventやtrackPageViewの直前にカスタム変数を適用する必要がある場合に呼び出します。メソッドが呼び出される度に動作します。スコープが指定されていない場合、これがデフォルトになります。
ページビューとイベントの追跡
ページビューの追跡は簡単です:ページビューを起動したい時に都度トラッカーオブジェクトの trackPageView をコールするだけです。イベントを記録するためには trackEvent をコールします。ページビューとイベントの詳細は、上記のSDKの概要を参照して下さい。
カスタム変数を利用する
カスタム変数の追加もまた簡単です:モバイルSDKによって提供される setCustomVar メソッドを利用するだけです。それぞれのカスタム変数のインデックスがどのようにマッピングされるかを前もって計画するだけで、既に存在する変数の上書きはしません。
カスタム変数の詳細な情報は、カスタム変数ガイドを参照して下さい。setCustomVar メソッドは直接、自身のデータをAnalyticsに送らないことに注意して下さい。次のページビューまたはイベント発生時に併せて送信されます(ピギーバックと呼ばれる方式です)。次の送信までの間はローカルのSQLITEデータベースに追跡情報が保存されます。ページビューやイベントの追跡前に setCustomVar をコールする必要があります。
バッチ処理で統計情報をアップロードする
接続が維持され続ける事やバッテリーの過負荷を防ぐため、追跡のリクエストをバッチ処理することをお勧めします。バッチリクエストを行いたければいつでも、追跡オブジェクトの dispatch メソッドをコールすることができ、手動でも一定間隔毎でもどちらでも実行することができます。
Tip: アプリケーション内で発生する他のHTTPリクエストにトラッカーをバンドルし、ディスパッチすることで、オーバーヘッドを低減することができます。
既知の不具合
不正確なタイムスタンプの可能性:タイムスタンプは Google Analyticsへアプリケーションからディスパッチされた時点で記録されますので、ユーザが長期間に渡りオフラインであった場合、タイムスタンプは100%正確ではないかもしれません。
リファラーの追跡
Android 1.6のOSリリースで、Androidマーケットへのダウンロードリンク中の、URLパラメータのリファラーがサポートされました。アプリケーション向けGoogle Analytics中の参照/キャンペーン情報を自動的に保持するため、Google Analytics SDK for Androidはこのパラメータを使用します。これは、(例えば、アプリの特定広告の有効性を測るといった場合に役立つような)ページビューやイベントを記録し関連付けるために、アプリケーションのソースをインストールすることを可能にします。
警告:アプリケーション中に生存する間はリファラーが残り続けるため、このリファラー操作は従来の訪問レベルのリファラーとは異なります。Androidでのリファラーのセットアップについては、原文のAndroidマーケットのリファラー追跡を御覧ください。
追跡を動作させるため、プロジェクトのAndroidManifest.xmlに、以下のブロードキャストレシーバを追加する必要があります。
<receiver android:name="com.google.android.apps.analytics.AnalyticsReceiver" android:exported="true">
<intent-filter>
<action android:name="com.android.vending.INSTALL_REFERRER" />
</intent-filter>
</receiver>
Androidマーケットのリファラー追跡
Androidマーケットを通じてGoogle Analyticsのリファラー追跡をセットアップするには、リファラーリンクを生成するURLビルダーを利用します。Analytics SDKは自動的にリファラー情報をパースして記録し、Analyticsのレポートとして公開します。リファラーリンクを生成するには、下記のフィールドを埋めてください。*1
パッケージ名、キャンペーンソース、キャンペーンミディアムとキャンペーン名は必須です。それぞれのパラメータの詳細な説明は、下記のテーブルを参照して下さい。
リファラーリンクパラメータ
パラメータ | 必須 | 説明 | 例 |
---|---|---|---|
utm_source | ◯ | キャンペーンソース:サーチエンジン、ニュースレター、その他のソースの特定に使用します。 | utm_source=google |
utm_medium | ◯ | キャンペーン媒体:eメールやコストパークリック(cpc)のような媒体の特定に使用します。 | utm_medium=cpc |
utm_term | キャンペーン用語:広告のために提供するキーワードを有料の検索で使用します。 | utm_term=running+shoes | |
utm_content | キャンペーンのコンテンツ:A/Bテストや、同じURLが指定された異なる広告やリンクのための、コンテンツをターゲットとした広告に使用します。 | utm_content=logolink utm_content=textlink | |
utm_campaign | ◯ | キャンペーン名:特別な製品プロモーションや戦略的なキャンペーンを特定するために、キーワードの解析に使用されます。 | utm_campaign=spring_sale |
アプリケーションのリファラー情報を渡すためのマーケットへのリンクは、下記の通りです:
http://market.android.com/search?q=pname:<package>&referrer=<referral>
<package>はアプリケーションのパッケージ名、<referral>はAnalyticsのキャンペーン情報のリストをエンコードしたURLです。URLを生成するツールが下記にあります。
http://code.google.com/mobile/analytics/docs/android/#android-market-tracking
利用シーンの例
Androidに特徴的な例をあげると、ユーザーがフルバージョンのアプリを持っているかどうかに依存するステータス、"Full"または"Lite"の状態を有する"アプリケーションタイプ(AppType)"が挙げられるでしょう。AnalyticsのWebインタフェースを使って、"Lite"ユーザだけを確認したり、特定のバージョンがどの位使用されているかを見たり、"Lite"と"Full"セグメントとの違いを見ることができるでしょう。
利用規約を守る――個人情報は追跡してはならない!
Google Analyticsはそれ自身の利用規約に基づいているため、それらを読み、守ることは非常に重要です。特にAndroidアプリケーションの中にこれらの情報は存在するため、Analyticsサーバに個人を特定できる情報を送信してはいけません。つまり、訪問者レベルのカスタム変数に「電話番号」「名前」「eメールアドレス」を含む事はできないということです。直感的ではないですが、しかしながらこれは重要で、アプリケーションがWebアプリケーションのクライアントであれば(例えば、CRMやショッピングサイト)、Analyticsに店舗の情報(ユーザIDやトランザクションIDといった、Webバックエンドに格納される個人が特定できるものと結合可能な情報)を格納できないことを意味します。
実行結果
今回はSDKに付属するサンプルアプリを使用しました。
事前にGoogle Analyticsのアカウントを作成
Google Analyticsのサイトに移動し、適当なURLとアカウントを入力。URLとアカウントは実在しないドメインでも良いです。
連絡先情報を入力(誰が連絡してくるのだろう・・・)
利用規約を読んで同意するにチェック。この規約はSDKを利用するアプリにも適用されます。
Web用のコードスニペットが表示されるので、そこに記載されている「UA-XXXXX-Y」の文字列を保存しておく。
SDKを搭載したアプリを操作する
アプリ自体は至ってシンプルです。ボタンクリックによって、ページビューやイベントの追跡が発生します。
Google Analytics上のレポート例
- レポートは初めて追跡を開始してから数時間(最大24時間)を経過しなければ表示されません。
このように、アプリから送信されたページビューやイベントの追跡情報が、Google Analyticsに表示されます。カテゴリ毎、ラベル毎、アクション毎など、様々な切り口から分析することができます。
まとめ
AndroidとGoogle Analyticsを使用すると、上記のように様々なユーザの操作などを情報を追跡する事ができます。このあたりの連携はさすがGoogle、といったところでしょうか。これらの追跡情報から、ユーザにとって使いやすいUIの配置を理論的に検討することもできるでしょう。
しかしながら、使い方によっては、ユーザーにとって知られたくない情報も収集されてしまう可能性もありますので、やはりアプリケーション内でこのSDKを使用している場合は、インストール時などにユーザーに対して情報を追跡している旨を伝え、事前の承諾を得る形で使用するべきでしょう(いわゆる、"オプトイン"方式)。
文責:技術部 植物工場研究G 瀬戸 直喜
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